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拓海
誰かを愛したら、"旅立ち届け"を書いて街を出ていかなければならない。
僕らの街に住む学生たちは、みんな従っていましたね。街の人同士で愛し合うと血が濃くなるから……でしたっけ。
あなたの想いに僕が応えた翌朝。クラス担任が僕らに告げた言葉。
あなたは笑って、言い返した。
「男同士なら、体をつなげても何も生まれませんよ」と。
すると担任が、「可能性の話だ」と怒鳴った。
可能性……。もしかしたら僕らの血は特殊で、僕は大地くんの子を体に宿すことができたんでしょうか。あの夜のようなことを僕らが続けていれば……。
あなたが亡くなり、あなたが僕に渡せなかった手紙……これは手紙ですよね? あなたのお姉さんから僕宛てに届きました。
大地くん。あなたの綴った秘密の言葉を読んでいるうちに、願うようになったのです。
あなたの遺したものが、もっと欲しい。あなたが創り出したものを、もっと僕は受け止めたかった。
たった一晩のことなのに、あなたと愛し合った夜は僕の青春でした。
あの夜が青春の頂で、あの夜が青春の終わりだった。あなたがくれた熱を、僕はいまでも思い出します。自分でも怖いくらいです、何十年経っても体が覚えているなんて。
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