8人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「鉛筆で描いた部分が穴になる。机に描いても机を貫通するわけじゃない。で、合ってる?」
「うん。円を描いても円の内側が落ちてくことはないしね。鉛筆みたいに描けて、描いたとおりに穴が空く」
「なんでそんなことに」
「黒を突き詰めたらそうなったみたい」
「未来人の考えることはわかんないな」
「大して変わんないよ。今も未来も」
なぜか黒部さんは苦笑を浮かべた。
その表情の意味もわからなかったが、そんなことよりわからないことが多すぎる。
「この穴ってどこに繋がってるの?」
「どうなんだろ。聞いたことないなあ。異世界とかじゃない?」
「そっか。じゃあよかった」
「なにが?」
「僕の無限ゴミ箱が誰かの迷惑になってなくて」
「どんな使い方してんのよ」
「消しカスとか捨てるのに便利なんだよ」
黒部さんは僕の机の端に描かれた歪んだ黒円をちらりと見た。
呆れたような、でもどこか楽しそうな微笑みを浮かべる。
「てか他人のもの勝手に使わないでよね」
「ごめんなさい」
「あはは、いいよ。許したげる」
落とした私も悪いしね、と彼女は笑う。
拾ったものとはいえそれを勝手に使ったのはさすがにまずい。怒られても仕方ないところだが、黒部さんは快く許してくれた。
と、思っていた。
「あ、やっぱり許さない」
「え、そんなことある?」
「うん。そんなこともあるの」
突然の撤回に戸惑っていると、彼女はさらに言葉を続けた。
「だから罰として、100Bの素敵な使い方を考えてください」
最初のコメントを投稿しよう!