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百田(ももた)くん、100B使ってるでしょ」  放課後、教室に一人残っていた僕のもとへやってきた黒部(くろべ)さんは何の前置きもなくそう告げた。  僕は思わず机から取り出そうとしていた筆箱を戻す。 「100B? なんのこと?」 「とぼけないでよ。こんな堂々と使っといて」  黒部さんは僕の机の上を指差した。  そこには小さな黒い穴が空いている。昨日までは綺麗な正円だったが今は円形の端が少しだけ削れて、いびつな形をしていた。  それを修正しようと今日は最後の一人になるまで居残っていたのだが、まさかこんなことになるとは。 「机に穴が空いてるだけだよ」 「裏側には通じてないのに?」  なんでそのことを。  僕がそう尋ねるより、彼女が口を開くのが先だった。 「証拠もあるんだから」 「証拠?」 「これ」  黒部さんはスカートのポケットから角砂糖ほどの大きさの白いキューブ状のものを取り出した。そしてそのキューブを僕の机の穴に近づける。  そんなことすると穴に落ちちゃうよ、と注意する間もなく彼女はキューブを黒い穴に押し付けた。  僕の予想を裏切り、白いキューブは机の穴には落ちていかずその輪郭を削っただけだった。円の歪みがさらに増す。 「これ100B専用の消しゴムなの」 「なんでそんなの持ってんの」 「未来人だから、私」  しれっととんでもないことを暴露しつつ、その途方もなさに僕はどこか納得もしていた。  そもそも100Bなんてものが存在すること自体とんでもないのだ。 「これでわかったでしょ? はい、今度は百田くんの番」  もう隠し通すことはできないか。  僕は観念して机の中からゆっくりと筆箱を取り出した。筆箱の口を開いて、一本の黒い鉛筆を机の中央に置く。  持ち手の端には小さく『100B』という銀色の文字が彫られていた。
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