少しずつ、一歩ずつ――

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 そう、呟くように言う先輩。雪のように白いそのの頬が、ほんのり朱色に染めながら。そして、そんな彼に対し―― 「……っ!! ……えっと、その……」 「……嫌ですか、玲里(れいり)先輩?」 「……いえ、滅相もありません」  そう、顔を上げ尋ねる。華奢ながら引き締まったその右腕を、ぎゅっと自身の両腕に(いだ)きながら。すると、最初は驚いていたものの、ほどなく穏やかに微笑む玲里先輩。……李星(りせ)、李星……ふふっ。  その後、ひとまず彼の腕を解放し再び歩みを進めていく。尤も、私としてはあのままで一向に良かったのですけど……まあ、流石に恥ずかしいでしょうし。  ……ええ、分かっています。きっと、まだ時間は掛かるのでしょう。今だって、抱き締めた彼の腕は、まだ少し――  ……でも、それでもいい。少しずつ、一歩ずつでいいから……二人のペースで、ゆっくり距離を縮めていけばいい。……そして、きっといつかは―― 「あ、ところで玲里先輩」 「はい、どうなさいましたか……り、李星さん」 「ふふっ、緊張しすぎですよ玲里先輩?」  校門に迫った辺りで、ふと呼び掛ける。そして、未だ緊張しっぱなしの可愛い先輩を微笑ましく見ながら言葉を紡ぐ。壊れないよう、そっと――それでも、ぎゅっとその手を繋いだままで。   「噂によると、女性がお嫌いとのことですが――それって、私も含まれていますか?」
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