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ブラック企業の屋上で
オフィス街はざわめく昼飯時、フラフラな足取りで屋上まで上ってきた。
もうずっと、うまく眠れていない。
耳鳴りがして体のあちこちに痺れが走る。しかし今朝もベルトコンベヤに乗せられたように、会社に辿り着いていたんだ。
俺はどうなってしまった…?
三年前、この有名企業に入社した当時の俺は光り輝いていた。ここから順当にエリート街道をひた走る! そう希望に満ちていた。
だが新世界への扉を開けたらそこは、旧体制の固定観念、慣習に塗り固められた石頭の巣窟であった。随時改革案を提示するも「新人のクセに」と、個性と主張を封じられた。
挙句、非効率的な業務が次々と俺を襲い、他人の尻拭いまでさせられている。
業績不振により長時間労働を強いられ、先月は残業八十時間超えだ。
俺が戻らなかったらみんな困るかな…。誰が案件Aや案件Bを引き継ぐんだ? 誰も信頼できない…。
何もかももう嫌だ。思考も記憶も途切れ途切れ。
情けないほど失敗続きなんだよ…こんなの俺じゃない。
もういいよな。僅かに残る力でこの手すりを飛び越えたら、自由になるんだ。
「よっと…」
南側の狭い路地なら誰かに衝突することはないだろう。他人を巻き込むことはしない。
父さん、母さん、そんな俺を褒め…て…
「赤井!?」
宙へ踏み出した時、ギィ…と出入口の扉が開いた。この目に映ったのは、同期で唯一親しくなった黄田。たぶん俺を探しにきて…
「赤井──ッ!」
悪い。俺だけ、楽になって。
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