9人が本棚に入れています
本棚に追加
マタニティブルーってやつかな…
ここからの流れはスムーズだった。彼女はその夜から俺の1LDKに転がり込み──
「優君、ご飯用意しておいたよ」
帰宅したら部屋の明かりがついていて、彼女が出迎えてくれる…これぞ至福。肉じゃが頻出だけど外食よりずっと温かみある。
なんで俺ここまで彼女作らずにきたんだろう。
まぁ今からでも遅くない。こんなに可愛くて優しい彼女ができたんだ。
さぁ青春を取り戻すぞ!
「…今なんて?」
交際三ヶ月め、晴れた日曜の昼下がり。
「赤ちゃんできたの」
カルボナーラを食しながら爆撃を受けた。
「冗談、だよな…?」
俺ちゃんとしてたし…
「初めて会った日のこと覚えてる? あのとき優君すごく野…」
「わああ! わ、分かった、結婚しよう!」
とっさに口をついて出た。
大学の夏季休暇は明けたが、桃花はつわりで通えないらしくリビングで寝て過ごしている。妊婦って大変なんだな。
「じゃ今夜も夕飯の買い物してから帰る。調理に時間かかってしまうけど待てるよな?」
「うん。優君の男メシ好きだよ」
桃花は俺のスマホをいじりながら笑顔を返した。ん? 俺のスマホ…?
「おい、なんでっ…」
「え、なに怖い顔してるの?」
「他人のスマホ勝手に見るなよっ」
慌てて手を伸ばしたがひょいと避けられて。
「見られて困ることでもあるの!?」
「そんなことはないけどっ…」
「はい、GPSアプリ入れておいたよ」
は??
「優君のため♪ 私からいちいち電話で居場所聞かれるよりいいでしょ」
「いちいち居場所を確認しなくても…」
ええ…、なんで疑いの眼で見てくるんだ?
「私…不安なの。妊娠中に旦那が浮気したってよく聞くもん」
「ああ泣かないで。分かったよ、分かったから」
浮気とか考えたこともないけど、それで桃花の気が紛れるならいいか…。
最初のコメントを投稿しよう!