マタニティブルーってやつかな…

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マタニティブルーってやつかな…

 ここからの流れはスムーズだった。彼女はその夜から俺の1LDKに転がり込み── 「(ユウ)君、ご飯用意しておいたよ」  帰宅したら部屋の明かりがついていて、彼女が出迎えてくれる…これぞ至福。肉じゃが頻出だけど外食よりずっと温かみある。  なんで俺ここまで彼女作らずにきたんだろう。  まぁ今からでも遅くない。こんなに可愛くて優しい彼女ができたんだ。  さぁ青春を取り戻すぞ! 「…今なんて?」  交際三ヶ月め、晴れた日曜の昼下がり。 「赤ちゃんできたの」  カルボナーラを食しながら爆撃を受けた。 「冗談、だよな…?」  俺ちゃんとしてたし… 「初めて会った日のこと覚えてる? あのとき優君すごく野…」 「わああ! わ、分かった、結婚しよう!」  とっさに口をついて出た。  大学の夏季休暇は明けたが、桃花はつわりで通えないらしくリビングで寝て過ごしている。妊婦って大変なんだな。 「じゃ今夜も夕飯の買い物してから帰る。調理に時間かかってしまうけど待てるよな?」 「うん。優君の男メシ好きだよ」  桃花は俺のスマホをいじりながら笑顔を返した。ん? 俺のスマホ…? 「おい、なんでっ…」 「え、なに怖い顔してるの?」 「他人(ひと)のスマホ勝手に見るなよっ」  慌てて手を伸ばしたがひょいと避けられて。 「見られて困ることでもあるの!?」 「そんなことはないけどっ…」 「はい、GPSアプリ入れておいたよ」  は?? 「優君のため♪ 私からいちいち電話で居場所聞かれるよりいいでしょ」 「いちいち居場所を確認しなくても…」  ええ…、なんで疑いの眼で見てくるんだ? 「私…不安なの。妊娠中に旦那が浮気したってよく聞くもん」 「ああ泣かないで。分かったよ、分かったから」  浮気とか考えたこともないけど、それで桃花の気が紛れるならいいか…。
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