黒幕との邂逅

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黒幕との邂逅

──“時空の狭間へようこそ” 「んん…」  ぼんやり瞼を開けたら…何もない、真っ白な空間? 「ふがいないのう。二度もしくじりおって。しかも三度目の転生に必要な“(ワシ)との面接”のため、ここまでやってくるとはの」  ?  …目の前に白ワンピースの白ヒゲ爺…。今、転生って言ったよな? ってことは… 「おいジジイ! アンタがこの茶番転生の黒幕か!」  俺は飛びかかり爺の襟を掴んだ。 「おぉぅ。確かにこのワシがおぬしにチャンスをくれてやったが、人生の選択を積み重ねたのはおぬし自身じゃろて」 「俺が悪いって言うのか!? 詐欺をはたらいた人間より騙された人間が悪いって!?」  「誰もそこまで言っとらんよ。しかし記憶を持ったまま転生しておいてあのザマとは…ぷーっ」  噴き出したなっ! 「一度目はともかく二度目はっ…あんな転生ありかよ! あんなのどうやったって…」 「おぬしが望んだんじゃ。現代日本ではない処で、生き抜く力の逞しい男に生まれ変わりたいと」  なんでそんなセミオーダー仕様なんだ…。 「ま、ここへ辿り着いたおぬしにはラストチャンスをやるぞ。三度目の正直って昔から言うからな、大船に乗った気でおれ」 「はぁ!?」  冗談じゃない! 「転生なんか二度とするかっ。ここまでのチャンスには感謝するよ。地獄の苦しみを経て俺は真理を得た。やっぱりこの世には絶望しかない!」  人は結局、絶望の中で死んでいくだけだ…。 「ふむ。こんなことなら生まれない方がマシだ、という論調は時代、地域を問わず見られるのう。人間が他の生物より高い知能を持つがゆえに」  そうだよ。最初から“無”であればいい。  無であれば… 「しかしなぁ」  爺はふぅとため息を吐き、問うてきた。 「おぬしの人生はそんなに悪いことばかりじゃったか?」 「…それは」 「その知能ゆえに、誕生日おめでとう、と生の喜びを分かち合う(すべ)を持つのも人間。次こそは、たった数十年の限られた時を思うがままにやりきってくれな」 「次…こそ…?」
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