①学校にて

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①学校にて

「ねぇねぇ、まゆ子」  腕の服を引っ張られ、我に返った澤村まゆ子は隣にいる友達の菜奈(なな)に意識を向ける。   「あの人でしょ?まゆ子の言ってる転入生」    そう尋ねる菜奈の声はやや大きめで、まゆ子は焦る。   「しー、菜奈ちゃん。聞えちゃう」    ここは朝の市営バスの車内。まゆ子達と同じ制服の高校生たちで混雑している。当然、車内はにぎやかだが、本人に声が届くのを彼女は避けたかった。    まゆ子は菜奈の視線の先にいる、先ほどバスに乗り込んできた人物を見た。その人は前方の吊り革に掴まり、横向きで立っている。   「そうだよ。あれが転入生の如月(きさらぎ)くん」    まゆ子は菜奈にささやく。   「へー、想像以上のイケメンじゃん」    菜奈は瞳をキラキラさせながら、ささやき返した。    バスの後方に座る彼女たちから見ても、その少年が美形なのがうかがえる。    ――如月レビヤ。高校2年生――  日本人と外国人のハーフらしく、まゆ子たちの高校へ転入するまで海外にいたそうだ。    赤茶色の(地毛らしい)サラサラの髪、少し異国風で整った目鼻立ちに黒い瞳、あまり血色を感じない白い肌。頭は小さく、背は高めでスラリとしたモデル体形。
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