1.人売りジール

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「おはよう、じゃねえよ。なんだよガルの奴! 注文は死体だったのに! 生きてんじゃねえか!」  女の子は、死んだ、と間違われたとは思えないくらい元気だった。ジールは、経験から、この子は人間じゃないかもと思った。 「お前、魔族か?」 「マゾク?」  女の子は身体が袋に入ったまま、きょとんとする。  ジールは半ば呆れて溜息をつく。    この世界には、一見、人間に見えて人間では無い者達がいた。それが魔族だ。  魔族には、異形の者もいるが、それらも含めて人間ほどの数はいないとされている。だが、確かにいる。獣の姿の者や虫の姿の者など多種多様な種が存在するが中でも人間型の多くは人間に紛れ、人間の様に暮らしている。  魔族には魔力が備わっている。人間の腕力と同じで、魔力には個体差がある。魔力の弱い者や、魔力に目覚めていない者は人間の中で問題を起こさずに人間として暮せてしまう為、自覚の無い奴が出てくる。だが、人間なら死ぬ様な大怪我をした時、彼らが人間ではないと分かる。 「魔族の自己再生能力は、魔力の弱い強いには関係ない。再生の核になっているのは心臓なんだと。心臓が機能不全にならない限り、何度でも身体が治るんだって、知り合いの不良司祭が言ってたよ」  女の子が不思議そうな顔をする。 「フリョウシサイ?」  ジールは片眉を吊り上げ、自分の義手を見せる。 「俺の右手を切り落とした男だよ!」
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