1.人売りジール

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「へんなのー」  義手を見て、女の子が言った。ジールは、子供相手にむきになる。 「立派な義手だ! 高かったんだぞ!」  女の子は、ジールの反論を無視する。 「ここどこ? いえにかえりたい」  ジールは、無表情になる。 「やめとけ。おまえは売られちまったんだよ」 「うられた……?」 「死んだと間違われて売られたか、自分で殺して売ったか。どっちにしても、お前は親に捨てられた。帰っても地獄だ」  女の子の目が、涙で滲む。 「かあさん、おまえをうるって言ってた」  ジールは肩を竦めた。 「だったら帰んない方が良いだろ」    ジールは、そう言いつつ悩む。  留めておいて、その先どうする? 自分は血が苦手だから、女の子を殺せない。これから来る解体業者は死体の解体しかしない。  ――いっそ生きたまま、奴隷として売り飛ばすか。いや待て、こいつは魔族だ。売った先で何かあれば俺の信用にかかわる……。
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