2.不良司祭ファーレイン

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2.不良司祭ファーレイン

「待ちなさいよ! この不良司祭!」  マルク教会の司祭にして人に害をなす魔族を(ほふ)る祓魔師のファーレインは、エンドルでの仕事を終わらせ、知り合いの所へ向かっていた。その途中、道で見知らぬ女に声を掛けられた。  一見、普通の青年にしか見えないファーレインだが、聖職者である彼は人と魔族の混血だった。それ故に、ファーレインには自分が真っ当な聖職者ではないという自覚があった。だが、見ず知らずの女にいきなり不良と言われると、そこはかとなく腹が立つ。  ――真面目に人を守ろうと仕事をしているのに。  ファーレインは、しかめ面で振り返る。 「なんですか?」 「何ですかじゃないわよ! オルグレウス! 長い事あたしをほったらかしにして!」  ファーレインは、あっと小さく声を漏らした。  複雑な事情を端的に一言で言えば、オルグレウスとはファーレインの双子の兄だった。兄の姿はファーレインと同じ為、彼女はファーレインをオルグレウスと間違えているのだ。  女が事情を知らず、涙目で詰め寄って来る。 「何処行ってたのよ! 寂しかったんだから!」 「あ、いや……」  どうしよう。  ファーレインは、困る。  ”じゃあな。しっかりやれよ”。  兄はそう言って、消えてしまった。  ――彼女に、どう説明すれば……。  その時、遠くから悲鳴が聞こえた。  
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