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夏休み前日、帰りの会の前の事だ。慶介(けいすけ)は山間の小学校に通う3年生。明日から夏休みで、慶介は喜んでいた。夏休みは長い。何をして遊ぼう。全く考えていない。
「これ、知ってるか?」
そこに、友也(ともや)がやって来た。友也は慶介の隣に住む同級生で、慶介と仲が良い。いつも一緒に帰っているほどの仲の良さだ。
友也はある物を見せた。それはとあるホームページを印刷したものとと思われる。そこには、トンネルの写真がある。
「何これ?」
「ハイキングコースにあるトンネル。今は使われてないんだけど、幽霊が出るんだって」
噂によると、この近くにトンネルがあって、幽霊が出るので誰も行こうとしないそうだ。
「本当? 行ってみたい」
「そっか・・・」
だが、友也は戸惑った。もっと嫌な噂を知っているのでは? その話を聞いて慶介は、行ってみようと思ったようだ。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
と、足音が聞こえた。畑中先生が来るようだ、。早く席に座ろう。
「あっ、先生が来た!」
畑中先生がやって来た。畑中先生は、優しそうな表情だ。
「起立! 礼!」
そして、夏休み前最後の帰りの会が始まった。慶介も友也も、それを真剣に聞いている。
帰り道、2人はあのトンネルの事を考えていた。色々面白そうだから、行ってみようよ。暑い夏を吹っ飛ばすための肝試しとして、いいじゃないか。
「そんなとこ、あるんだね」
「うん。行ってみようよ」
「そうだね」
2人は決めた。明日、あのトンネルの前に集合だ。もちろん、行くと両親に話してからだ。
「明日、問題のトンネルの前で会おうぜ」
「うん」
慶介の家の前にやって来た。ここで慶介とは別れだ。また明日、トンネルの前で集合だ。
「じゃあね、バイバーイ!」
「バイバーイ!」
慶介は玄関を開け、家に入った。慶介の家は近代的な2階建てで、両親との3人暮らしだ。
「ただいまー」
「おかえりー」
やって来たのは母だ。父は仕事で、夜まで帰ってこない。
「明日、ちょっと友達と出かけてくるから」
それを聞いて、母は不安になった。だが、今は夏休みだ。好きな事をさせるべきだ。
「そう。変な所に行かないでよ」
「わかってるって」
慶介は誓った。絶対に変な所にはいかない。それに、友也が一緒だから絶対に大丈夫だ。
「ならいいけど。どうなっても知らないよ」
「わかってるって」
「まったく」
母は呆れた。どうしてこんなに慶介は無鉄砲で、好奇心が旺盛なんだろう。危ない事に巻き込まれないか心配だけど、まぁいいか。
翌日、慶介は問題のトンネルの前にやって来た。このトンネルはハイキングコースのはずれにあって、ここに行こうとする人はいないという。だが、そんな場所こそ、行ってみたくなるものだ。
「おはよう」
友也は振り向いた。そこには慶介がいる。慶介は半そでに短パンだ。
「おはよう」
2人はトンネルを見上げた。ここは噂のトンネルなのか。本当に幽霊が出るんだろうか?
「この先?」
「うん。噂では、ここで大きな事故が起こったらしいよ」
もっと詳しい事を話すと、これはかつて鉄道トンネルで、この辺りで大きな事故が起こり、多くの死者が出たという。それから間もなくして、このトンネルは使われなくなったという。
「そうなんだ」
ここはハイキングコースだ。だが、この辺りには人が全く通らない。この辺りに来ようとする人はあまりいないようだ。
「人気がないね」
「うん。ここは誰も近寄ろうとしないんだ。トンネル自体、危ないから。もう何十年も前から使われていないんだもん」
このトンネルは、幽霊が出る以上に、崩落の危険があるからという理由で誰も立ち入ろうとしないという。
「そうなの?」
「ああ」
友也は深く息を吸った。さぁトンネルに向かおう。もう迷う事はない。
「行こう!」
「うん!」
2人はトンネルに入った。トンネルの中はひんやりとしている。まるで夏である事を忘れてしまうかのようだ。
「ひんやりしてるなー」
「ここをかつて電車が走っていたんだね」
今では全く想像がつかない。だが、確かにここには鉄道が走っていた。
「ああ」
と、向こうから何かが聞こえてきた。電車のジョイント音のようだ。もう電車は走らないのに。レールはないのに。どうしてだろう。
「ん?」
2人は前を向いた。向こうから電車が迫ってくる。しかも、猛スピードだ。
「電車?」
電車は脱線したが、止まらずにこっちに向かってくる。ブレーキが故障したようだ。
「突っ込んでくる!」
「早く出よう!」
2人は必至でトンネルの出口に向かった。その間にも電車は近づいてくる。本当に出口にたどり着けるのか、心配だ。だが、やってみないとわからない。早く逃げよう。
だが、突っ込んでくる電車のスピードは速く、あっという間に追いついた。そして、2人に迫ってくる。
「もうだめだ!」
2人は投げ飛ばされた。幽霊だけではなく、電車も出るとは。このトンネルはどうなっているんだろう。だが、もう遅い。
「うわぁぁぁぁ!」
慶介は目を覚ました。ここはトンネルの前だ。何があったのか、全くわからない。跳ね飛ばされてから、意識を失っていようだ。
「あれっ・・・」
友也も起きた。友也も、今さっきこのことが理解できていない。
「何だったんだろう」
だが、友也は開き直り、家に帰ろうと思った。恐ろしい場所だとわかったんだ。もう行かないようにしよう。
「まぁいいか。もう帰ろうぜ」
「うん」
だが、慶介は手を見て、驚いた。赤い血のりが付いているのだ。まさか、あの幻が原因だろうか?
「えっ!?」
「どうした」
友也は横を向いた。慶介に何かあったんだろうか?
「手が・・・」
慶介は手を見せた。そこには赤い血のりがある。それを見て、友也は驚いた。
「えっ!? 血?」
と、慶介は友也の手にも血のりが付いているのに気が付いた。
「友也くん、君の手も!」
友也が両手を見ると、そこには血のりが付いている。まさか、あの事故のせいで呪われたんだろうか?
「うわっ・・・」
2人はゾクッとなった。まさか、呪われたんだろうか? 呪われるというんなら、行かない方がよかった。
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