黒魔法の実績を解除しました

5/17
前へ
/17ページ
次へ
 翌日、俺が出社すると、総務部で「街でチンピラに囲まれた話」が話題になっていた。なんでも、急に現れた男が助けたんだとか。 「本当?そんなヒーローみたいな人がいるなんて」 「そうなのよ。佐藤さんが直接体験したらしいわ」  総務部の女子たちが興奮気味に話しているのが聞こえてきた。俺はいつもの通り営業部の方へ向かいながらも、既視感がある話だなと思った。まさに昨夜の出来事そのものだ。  デスクに着くと、同僚の中田が話しかけてきた。 「聞いたか?佐藤さんが街でチンピラに襲われたけど、正体不明の男に助けられたらしいぞ」 「そうなのか。大変だったんだな」と俺は無表情で返す。 「ああ、でもその男がすごいんだよ。まるで漫画のヒーローみたいだったって」  内心では笑みをこぼしそうになるが、表情には出さずに「そうか」とだけ答えておいた。  午前の業務を終えて昼休みに入ると、俺は食堂で佐藤さんを見かけた。彼女は友人たちに昨夜のことを話している最中だった。 「本当に怖かったけど、その男が現れて……すごい力でチンピラたちを倒してくれたの」  彼女の話に友人たちは驚きの声を上げていた。  俺は彼女と目が合った瞬間、彼女は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んで頷いた。その表情には感謝と、俺の秘密を守るという約束の意志が込められているのがわかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加