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円華は清掃後、コンビニに寄ってスイーツを買い、近くの公園でそれを食べる、というのが習慣であった。
理由は単純。一仕事終えた後のスイーツはたまらなく美味しいから。
円華がベンチに座ってプリンを頬張っていると、暗がりから1人の男が近寄ってきた
「猫みたいな近寄り方すんなよ、店長」
円華が男を見てため息をつく。
黒いスーツを着て、短い黒髪の男が笑いながら円華の前に姿を現した
この男こそ、円華に仕事を依頼し、彼女の上司である店長だ。
円華でさえ彼の名を知らない。
しかし彼女はどうせ覚えられないのでそれでいいと思っている。
「猫に例えられるだなんて心外だ
おいしそうなプリンだな」
「あげないよ」
「いらねぇよお前の食べかけなんて」
店長は円華の隣に腰掛ける。
「なあ円華
どうしてお前は、そんなに金に執着する?」
「それ聞く?」
円華は疎ましげに店長を見る
「私の親父がね、私がちっちゃいときに有金全部持って女と逃げたの
そこで金がないと生きていけないって思ったから、今この仕事をやってるわけ」
「恐ろしい過去を淡々と話すな...
お前にも人間らしい気持ちはないのか?親父を憎むとか、相手の女を憎むとか」
「そんなの思わないよ、あのクソジジィが何してたって興味ないからね
今ごろ私の同業者にでも殺されてんじゃないか?」
「お前に人並みの感情を求めた俺が馬鹿だったよ」
店長はそう言ってため息をついた。
なぜこの仕事を続けるのか...
西条円華の答えはただ一つ。
「給料がいいから。」
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