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すくすく育ちました
二人に引き取られた次の日、見知らぬ女性が家にやってきた。彼女はお隣に住んでいる奥さんで、お婆さんが私へ母乳を飲ませてくれるように頼んでくれたらしい。
前世の記憶がある私は、意識は大人だから最初恥ずかしかったけど、優しく抱いてくれる母性にすっかり安心して、すぐにおっぱいに吸い付いていた。
濃厚、なのかな? でも味は正直言って前世で飲んでいた牛乳の方がおいしかった。
だって生温いんだもの。
おっぱいを貰うようになって一週間もすると、私には歯が生えてきていた。
いや、早いって。
それに生え揃うまで歯茎がめちゃくちゃ痒かった。
それはもう泣いちゃうくらい。
赤ちゃんだから泣くの普通だけどさ。
それから歯が生え揃った私は離乳食を食べるようになった。
味の薄いお粥。お米じゃなくて麦っぽかった。麦飯食べたことないから正確には分からないけど、まあとりあえずお米じゃないな。
それも一週間ぐらいで卒業して、その後はお爺さんお婆さんと同じものを食べるようになっていた。
同じ食卓を囲むだけだけど、凄く幸せな時間だった。社畜時代は大抵一人でコンビニ飯だったからね。
そうこうしている間に、この家に来てから一ヶ月が経った。
そう、まだたった一ヶ月だというのに、私はもう五歳児ぐらいの大きさにまで成長していた。物語通りの早さだけど、やっぱり変な感じ。
お爺さんとお婆さんは、この早過ぎる成長速度を訝しく思うこともなく、ただただ私を毎日のように「めんこい」「めんこい」と可愛がってくれた。
だからか、私も二人のことが自然に大好きになっていた。
愛情って大事よね。
私は私で、自分の体がどんどん成長していくことに戸惑いながらも、ここの生活に順応していった。
よちよち歩きはすぐに卒業して、今では走り回ることもできる。それにしても五歳児の体力って凄い。自分で言うのもなんだけど、走り回っても全然疲れない。あと、なぜか分からないけどめっちゃ笑いながら走ってる。前世でも疑問だったけど、子どもはなんで走るだけで楽しそうなのか。
実際に子どもになった今、自分も改めて経験して思った。
うん、分からん。全然分からんが、とにかく楽しい。
いやー、無邪気ってこういうことかもなあ。
それから、喋ることもすぐに出来るようになった。
「あー」とか「うー」といった言葉は最初だけで、声帯が発達するのも早いんだろうけど、すぐに話せるようになったのだ。
ちなみに、私が最初にきちんと喋った言葉は「ばあ」と「じい」である。
赤ちゃんなのに、空気を読めちゃう私。
もちろん二人は大喜びだった。
それから徐々に色んな言葉を発するようになっていって、今では普通に話が出来るようになってきた。きたんだけど、私が話す言葉は前世の言葉遣いで、お爺さんとお婆さんのような方言じゃない。というか二人の会話が聞き取れないことすらあるんだよなあ。色んな地域の方言が雑ざったような感じだから、余計に変に思うのかもしれない。
さすがに知らない言葉遣いを流暢に話すのは変に感じると思ったけど、お爺さんたちはむしろ凄く喜んだ。
「めんこい上に賢いんじゃのお」
「ほんにええ子じゃのう」
おおらかというか、何も考えてないんじゃないかと思うレベル。
可愛がってくれるのは嬉しいけど、それでいいの?
私は心配だよ。
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