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これからのことを考えてみました
それからも私は二人の愛情を受けて、大切に育てられた。
いやほんと過保護に。
ある日から家から出ることを禁じられたし、走ることも禁止された。
理由?
いつも通り元気に走ってたら、何もない所でコケて膝を擦りむいたから。
「おめさんに怪我あ、させらんめえ」
「そうよう。外は怖いんよ」
分かるけど。
分かるけど、可愛がるのと閉じ込めるのは違うのよ。
そう思いつつ、二人が悲しむのは私も嫌だったし、私は家で大人しくしていたのだった。
そうなると昼間の起きている時間が暇で暇でしょうがなかった。
だってさ、元ブラック企業の社畜だった私に長い時間をどう過ごせと?
確かにスローライフしたいって言ったよ?
でもさ、私が求めているのはこういうのじゃないのよ!
聞いてる神様!!
心の中で愚痴った私は、とりあえず家の中で出来ることと、これからのことを思案して過ごすことにした。
前世で読んだ転生ものだと、主人公は須らく努力するのよね。まあ殆どが魔法の練習だった気がするけど。今の私は魔法なんて使えないし、運動するようなキャラでもないし。
・・・んー、でも前から気になってたし、ここらで一回試してみようかな。
私はすっと目を閉じて一呼吸置いてから、あの有名な言葉を唱えてみた。
「ステータス、オープン!」
・・・・・・。
何も起こらなかった・・・。
うん。だと思った。やっぱり魔法の世界でもゲームの世界でもないみたい。
となると、次に考えるべきはこの世界のことよね。
そもそも、ここは竹取物語の世界であっているのかな? 今のところ私は「かぐや姫」のまんまだけど。
現状では竹から産まれたということ、成長が早いということしか分かっていないのよね。
集落の様子やお爺さんたちの服装と毎日の食事から、日本の平安時代から室町時代の田舎だとは思うんだけど。
これは要確認ね。
仮に竹取物語の世界だとしたら、この後は成人する時に占いで名前をもらうんだったっけ?
そう。実は今の私にはまだ正式な名前がなかったりする。お爺さんとお婆さんには「おめさん」って呼ばれてるんだよね。分かるからいいけど。
それから、五人のお貴族さまに求婚される、はず。でもうろ覚えなんだよなあ。誰に何を要求するんだっけ?たしか蓬莱関係がいくつかあったような。燕の子安貝はなんとなく覚えてるけど。
うーん。
忘れた。
それから帝が来て、また求婚されて。それも結局は結婚しないで月に帰る・・・んだったような気がする。気がするけど、どうだったかなあ。
あーっもう! 細かいところが分かんないよ、神様!
どうせなら有名な話の世界にしてよ、神様!
竹取物語は有名だけど!!
・・・一人で考え事するとノリツッコミが上手くなるよね。
ええと、あとはなんだっけ?
恋愛じゃ和歌で思いを伝えるんだったかな。
返歌とかもあったような・・・。
うん。
できないよ神様!
そんな雅な趣味なんて私には無いよ!
無理無理、絶対無理!!
こうやってここにはいない神様に向かって愚痴りながら悶々と考えている間に、私は一つの天啓を得た!
そうだ。
求婚されたら、どれか受けちゃってもいいんじゃない?別に物語通りにしなきゃいけない決まりもないし。むしろハーレムだって出来ちゃうかも。でも「私のために争わないで」って言うのも憧れるのよね。
えへへ。あー、どうしよう!
思春期のエッチな妄想よろしく、私はニヤニヤしてしまった。
それを見たお婆さんが一言。
「顔が悪くなっちゅうよ」
・・・はい。自重します。
ふーっとため息をついて、ちょっと冷静になった私は今後の方針を決めることにした。
どちらにしろ家ではやることもないし、お婆さんのお手伝いをしながら情報収集かな。
一応ここは竹取物語の世界だと仮定しておこう。
私の成長が早いのは確かだもんね。早いところ調べないと、あっという間に大人になっちゃう。
まずはお婆さんと色々話してみて、ここがどんな世界か知ること。それから可能なら文字についても調べたいな。家の中には文字がないから、そもそも字があるかどうかも分からないけど。もし歌や手紙を送る文化があったら大変だもんね。
やることが決まると、私は密かに気合いを入れるのだった。
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