色々聞いてみました

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色々聞いてみました

 早速私はお婆さんから色々と聞き出そうと、炊事場の掃除を一緒にしながらお婆さんに話しかけた。 「ねえお婆ちゃん。ここってどんな人が治めてるの?」 「治めるなんて難しい言葉をよう知っとうのう」 「えへへ、ありがとう。で、どうなのかな?」  私は少し真面目な顔で聞いてみた。 「そりゃ村長(むらおさ)よの」 「うーんと、そうじゃなくって。この国の一番偉い人」  お婆さんは少し顔を上に向けて考えて言った。 「んなら(みかど)かいの。都いう所に()るんよ」 私は「ふーん」と一応納得したように頷いた。そしてまた次の質問をした。 「じゃあさ、帝って人が色んなこと全部決めてるの?」 「いんや、何とかいう大臣がおったはずやけどな。でもごめんなあ。婆は(まつりごと)全然知らんのよ」  お婆さんは申し訳なさそうに答えた。  まあこんな田舎ならそれが当たり前だろうなと私は思った。生活に手一杯なんだろうから。  そんな中、お婆さんは気になることを言った。 「ああでも、爺様は出世したい言うてたな。最近は毎日んように黄金が手に入るから欲が出たんかいのう」  そういえば物語でもお爺さんは竹から黄金を手に入れてたっけ。でも私は知らんぷりして、驚いたように言った。 「そうなんだ!じゃあお金持ちになるね!」  お婆さんは私の言葉に笑って言った。 「そうねえ。私は家族で静かにおれたらそれでいいけんど。歳とってから偉あなっても爺様が辛いべなあ」  確かに、急に出世しても周りだって大変よね。仕事が出来ない年上の後輩が出来たと思ったらいきなり上司に・・・なんて。ああ怖い怖い。  私が身震いしていると、お婆さんが私に聞いてきた。 「んでもいきなり難しいこと聞いて、どうしたよ?」  どう答えようか。 「なんか気になったから」  うん。当たり障りのない答え。 「ほうかい?まあ他にも気いなることあったら聞いてなあ」 お婆さんは私の頭を撫でながら笑って言った。 その夜。私は布団に入って、お婆さんと話したことを整理していた。 時代までは分からないけど、限りなく竹取物語の世界に近いわね。 お爺さんが黄金を手に入れているようだし。 帝がいるってことは、物語通りならその人から私は求婚されるかもしれないのね。 政治については今度お爺さんにも聞いてみよう。 そう思って私は眠りについたのだった。  また別の日。この日も確認したいことを聞くため、お婆さんにくっついて過ごしていた。  さて、今度は経済や文字について聞いてみようかしら。  私はそう思い立ち、縫物をするお婆さんの横にちょこんと座って質問をした。 「ねえお婆ちゃん。欲しい物がある時はどうしてるの?お金があるのかしら?」 「お金え?爺様の取ってくるもんかい?偉あ人は使うとるけど、うちらん村じゃ余ったもんを持ち寄って交換するんよ。村長が決めた日に皆あで集まってな」 なるほど。物々交換って訳ね。 私がうんうんと頷いていると、お婆さんが私に尋ねてきた。 「なんね、欲しいもんでもあるんか?」 「うん!本とかってないかな?」 「本?なんねそいは?」  やっぱり知らないよね。 「それじゃ、お婆ちゃんは文字って分かる?」 「文字かい?都じゃ紙ちゅうもんに書いとるよな。婆もずっと前に見たけんど、にょろにょろした汚れに見えてなあ、さっぱり分からんやったねえ」  所謂(いわゆる)くずし字、かな。それは私も読めないな。 「私も見てみたいな」 「村長が何か持ってるかもしれんなあ。爺様に聞いてもらおうかいの」 「ありがとう、お婆ちゃん!」  読めないかどうかは実際に見てからだ。  まあ神様はチートは無しって言ってたから、きっと読めないんだろうけど。  また違う日。  今度はハーレム計画に必須なこの世界の恋愛事情のことを聞くため、お婆さんにお爺さんとの馴れ初めを聞くことにした。 「ねえお婆ちゃん。お爺ちゃんとはどうやって結婚したの?」 「なんね、急に」 「だって、あんなに仲が良さそうなんだもん。羨ましくて」 「私らあはこの村で育ってなあ。幼なじみなんよ」 「へー、そうなんだ!」  私のキラキラした顔を見て嬉しくなったお婆さんは色々と話してくれた。 「爺様は都に憧れとってなあ。文をくれようとしたんだあ。けんど私らあ文字なあ知らんしなあ。それでも梅の花あ手折って「一緒になろう」言うてくれたんよ」  めっちゃロマンチックじゃない、お爺ちゃん! 「家ん所の梅はそん時んだあ」    あの玄関先に植えられた梅?!  そっかあ。あの梅は二人を見続けてきたのね。  それからもずっと惚気てるお婆さんは可愛かったけど、お爺さんが家に帰ってきたタイミングで私たちの恋バナは終わりを迎えてしまった。 「どしたね二人で?なんか楽しいことでもあったかいな」  お爺さんがどことなくフワフワした空気を感じたのかそんなことを聞いてきたけど、私とお婆さんは「秘密!」と笑いあったのだった。
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