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久しぶりに神様と話しました
ギュっと閉じていた目を開けると、そこは前世で死んだ際に神様と会った空間だった。
「お久しぶりですね美樹さん。いえ、かぐや姫と呼びましょうか」
背後からの声に振り向くと、そこにはやっぱりあの時の神様がいた。
「お久しぶりです、神様」
私がお辞儀をすると、あることに気が付いた。私の髪の毛が短いのだ。かぐや姫として生きている現在ではまだ髪を切ったことがないから、ものすごく長いロングヘアのはずだった。でも今は奥村美樹として生きていた頃の髪型になっている。
「ふふ、昔の容姿で不思議ですか?今回あなたは前世の記憶を持って転生しました。ですので魂の記憶は美樹さんとしての形が強いんですよ」
言われてみると、身長や体型も以前のもののようだった。
私が納得している雰囲気を感じたのか、神様はうんうんと頷いてからまた話しかけてきた。
「それで、今世は楽しめていますか?」
「そうね、今のところ家の中に軟禁状態ですけど。体の成長も早いし、まだ楽しむって程じゃないかな」
私は正直な感想を伝えて、そしてちょっとだけ皮肉も言ってみた。
「でもどうせなら初めからかぐや姫になるって教えておいてくれても良かったんじゃない?」
「そうですか?ネタバレは嫌われるものでしょう?私なりに気を使ったんですよ」
神様は「分かってますよ」と言わんばかりの顔で答えた。
「そりゃどうも。で、かぐや姫として産まれたのはもう分かったけど、これからどうすればいいの?」
「あなたの好きに生きていいのですよ。これからおモテになるでしょうし、恋愛だってし放題です」
そりゃまあそうよね。それにかぐや姫として物語通りに生きたくても、私の記憶が曖昧だからどっちみち無理だし。
じゃあ神様のお墨付きももらったし、これからの人生を楽しみますか!
「ただ・・・」
神様から、これからの生き方を想像して浮かれそうな気分だった私に水を差す言葉が出た。
「月からのお迎えは、あなたの元にもやって来ます。これからの生き方次第で時期は変わるでしょうが、最終的には天に還ることになるので覚えておいてくださいね」
おおう、マジか!
もしかしたらと思ってたけど、今回の人生も短くなりそうね。
「今生の寿命はあなた次第ですよ」
私の心を読んだみたいに、神様が話しかけた。
「あなたが前の世界で読まれた竹取物語と似てはいますが、ここは別世界です。大きな流れは似ているかもしれませんが、あなたがこれから生きるかぐや姫は、あなた自身が主人公の物語です。どうか楽しんでくださいね」
そういって神様は私に微笑んで、転生の時みたいに手をかざした。
私は神様に声をかける間もなく光に包まれて、地上へと意識を戻したのだった。
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