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この時期、町のあちこちで見かける笹竹と短冊。
他の飾りもあるけれど、七夕の笹竹には、織姫と彦星に願いをかける短冊がずらり。
その中にいつからか、同じ願いが書かれているのを見かけるようになった。
『この世界が滅びますように』
なんとも物騒で嫌な気持ちになる願い。
これを書いた奴の心理は判らないけれど、せめて、飾る側が規制して外に出すなよ。
この願いの短冊を見かけた頃はそう思っていたけれど、どこへ行ってもこの一言がかかれた短冊を見かけるようになって数年。
これは普通の人間が書いたものじゃない。さすがに俺もそう思うようになった。
だって、イタズラにしては数が多すぎるし、家庭用などの、よその人が書き込めない短冊にも同じ言葉が記されている。そんなことができるなんて…さすがに、人間じゃないとしか言いようがない。
おそらく人外だろう何かが、ひたすら短冊に願いを書き連ねている。あんな不吉な願いを。
毎年それを一度は目にするから、いつしか俺は、七夕が近づくたびにこう思うようになった、
雨よ、降れ。
離れ離れの夫婦には悪いけど、天の川が渡るな危険状態になれば、願い事を綴った短冊も水に流されてくれそうだろ?
本当に、二つの星には悪いけれど、不吉な短冊の願いが叶わぬよう、どうか総てを流す雨よ降れ。
雨よ降れ…完
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