3人が本棚に入れています
本棚に追加
朝凪のひと時に朝焼け飴を
夜明けの海を走るクルーズ船の上。せっかくの船旅なのに、船酔いしてしまった。私はベンチでうなだれる。
不意に誰かが肩に触れた。
「大丈夫ですか?」
船内のレストランで働く魔法調理師だ。事情を話すと、彼は私の背中をさすった。
「船酔いに効くお菓子があるんです」
彼は青く輝く取っ手の杖を取り出し、空中でジグザグに振る。陸から吹く柔らかい風が、朝焼け色の糸となって杖に絡まった。風がおさまった頃には、一口サイズの綿飴が出来ていた。
「さあ、どうぞ」
ふわふわの飴はすっと溶けて、甘い露となった。潮風を含んでいるのか、塩気も感じる。
「早く良くなりますように」
魔法の綿飴と彼の言葉で、ムカムカしている胃が軽くなった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!