朝凪のひと時に朝焼け飴を

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朝凪のひと時に朝焼け飴を

 夜明けの海を走るクルーズ船の上。せっかくの船旅なのに、船酔いしてしまった。私はベンチでうなだれる。  不意に誰かが肩に触れた。 「大丈夫ですか?」 船内のレストランで働く魔法調理師だ。事情を話すと、彼は私の背中をさすった。 「船酔いに効くお菓子があるんです」 彼は青く輝く取っ手の杖を取り出し、空中でジグザグに振る。陸から吹く柔らかい風が、朝焼け色の糸となって杖に絡まった。風がおさまった頃には、一口サイズの綿飴が出来ていた。 「さあ、どうぞ」 ふわふわの飴はすっと溶けて、甘い露となった。潮風を含んでいるのか、塩気も感じる。 「早く良くなりますように」 魔法の綿飴と彼の言葉で、ムカムカしている胃が軽くなった気がした。
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