神の賽

1/1
前へ
/15ページ
次へ

神の賽

 カラカラと音を立ててサイコロが三の目を出した。 「六が出たな」 俺がそう呟くと、サイコロはぐにゃりと捻じ曲がり、六の目に変わる。周りは失望と焦りで色めき立つ。誰も出目の変化には気づかない。 「賭け銭は全部いただいてくぜ」 金をかき集め、颯爽と賭場を後にする。  賭場に入る前に、裏路地の雑貨屋で「神の賽」を買って食ったのが功を奏した。薬臭い煎餅でできた菓子で、食った後に一回だけ、サイコロの出目を変えられるというものだ。まさか本当に効果があるとは。  上機嫌で暗い路地を歩く。突然、腹に鋭い痛みが走った。見れば、雑貨屋の店員が短刀を持って立っていた。 「あの力を使う場合、追加の代償が必要でして」 店員の口が弧を描いた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加