異世界食紀行ファンタジア・ガストロノミカ

閃光トビウオのうきうきつみれ汁

　空を飛び回る閃光トビウオは、飲食店でも食卓でも人気の食材だ。普通のトビウオと違って、なんと胸ビレと腹ビレも食べられる。それらのヒレには光を浮遊力に変える物質が含まれており、猫のあくびと人面花の涙を混ぜたお湯で煮ると、旨味成分に変化する。乾燥させて粉末にすれば、料理にも使いやすい。
　今日の夕飯は、閃光トビウオの身をすりつぶし、ヒレの粉末を混ぜて作ったつみれ汁だ。つみれは口の中でふんわりほどけ、魚の旨味とほのかな甘さが上品に存在感を醸し出す。一口、また一口と食べていくと、ふわふわと身体が宙に浮かぶ。加工しても、ヒレには浮遊の力が残っているのだ。あまりのおいしさに心も身体も浮き浮き、というわけである。