3人が本棚に入れています
本棚に追加
魔の山の恵み
魔物退治のために僕がやってきた岩山には、食べられる鉱石があちこちにあった。東の国の琥珀糖という菓子に似ていて、外はシャリッと、中は柔らかい食感だ。味は含まれる魔力によって異なる。火の力を宿すなら、スパイシーで塩気がある。風の力なら、清涼感のある柑橘系。味にバリエーションがあるのも飽きなくていい。
食べ歩きながら山の中を進むと、軽装の若い男性に出会った。
「この鉱石は美味いだろう? 俺が作ったんだ」
僕が美味しいです、と言うと、彼は笑った。
「お前は美味しくて幸せ、俺は獲物を捕まえられて幸せ。良いことだ」
途端、僕の体内の魔力が暴走し、あまりの苦しさに膝をついた。
目の前にあった男の脚には、蹄がついていた。
最初のコメントを投稿しよう!