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これまで無意識にヴァレリアに与えていたものを、リダはいまはっきり意識してクローディスに与えた。
彼はもう似非者などではないはずだった。
「──あとは任せてくれ」
クローディスは低く言った。
彼が顔をあげ、いままさにかがり火に迫ろうとする光の矢と影の翼を見据えた次の瞬間。
「えっ!?」
ヴァレリアが動揺の声をあげる。
かがり火の前の空中が一瞬揺れ、光の矢がはじかれ、影の翼が呑みこまれる。
ヴァレリアは眉を逆立てた。
軍勢さながらの数の光の矢と影の翼とが空中に現れた。
「無駄だ。きみの魔力はそこまでだ」
クローディスの声とともに、ヴァレリアの光の矢と影の翼がふたたびむなしく消える。
それを見たヴァレリアが、ふらっとよろけた。
それでもどうにかもたげた指の先に、かすかに光と影とが生まれかけたが、力なく消えた。
ヴァレリアが目をみはった。
その顔に影を躍らせるかがり火は、恐怖と絶望とをより色濃く見せていた。
「この先も聖女の名声が欲しければ、俺たちにかまうな」
クローディスが静かに言い渡した。
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