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2 うたたねのあとで
どれくらい眠っていたのだろう。
家のベッドとはずいぶん違うひんやりと硬い感触に、リダはとまどいながら目を覚ました。
頭上には銀の葉裏を見せる樹冠が風にさざめき、木漏れ日がちらちらと頬にたわむれていた。
(──ああ、狩猟会に来ていたのだったわ)
姉とのあまりの格差に心が痛んで具合が悪くなり、平石の上で気絶するように眠ってしまったことを思い出す。
鈍い頭痛はかなりおさまっていたが、リダは用心深く体を起こした。
「おはよう、体調はどうだ?」
知らない声がいきなり挨拶してきた。
リダは驚いて危うく平石から落ちそうになった。
「おっと」
手袋をはめた手がさりげなくリダを支え、すぐに離れた。
リダはおそるおそる相手を見上げた。
「……あなたは、どなたですか?」
二十歳前後の、濃色の髪の青年だった。
狩猟会の場にいるのだし、服装の上質さから言っても貴族、それも高位の身分であることは疑いようもない。
ただ端整な顔からは、まるで世界に自分の存在を見せつけようとしているかのような、どこか挑発的な印象を受ける。
(なんだか貴公子らしくない方だわ)
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