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リダのそんな第一印象は、すぐに肯定されることになった。
「あはははは!」
青年は大声で笑った。
そうしてから無遠慮にリダを見つめてきた。
切れ長の知的な目だが、完全におもしろがっている。
リダはたじろいだ。
社交界にはまったく関わっていないせいで、この青年の素性もまるでわからない。
「な、なんでしょうか? ご無礼がありましたら申し訳ありません」
青年は、まだ笑い声の気配が残る声で言った。
「どちらかと言えば、きみのほうが無礼だと怒るべきだな」
「それはどういう意味でしょう?」
「キャシアス侯爵令嬢の可憐なる寝顔を拝見するという、このうえない恩寵を見も知らぬ男に与えてしまったのは、きみの本意ではないだろう?」
青年はそう言うと体をかがめ、リダの足もとから自分のマントを取った。
それが自分の体にかけられていたものだと気づいて、リダはようやくいまの状況を正確に理解した。
(なんてだらしないことを──)
リダのマントの留め具にはキャシアス侯爵家の紋章が刻まれており、青年はそれを見たのだろう。
そんなことに気づけなかったほど、リダはいぎたなく眠りこけてしまった。
恥ずかしさでかあっと頬が熱くなり、情けなさで目の奥がじんと熱くなってくる。
青年は面食らったらしい。
「何も泣かなくても」
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