2人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
リダは唇を噛みしめて答えられない。
こんなことが知られてしまったら、また両親をがっかりさせ、さすがの姉すらあきれさせてしまうに違いない。
「弱ったな……すまない、からかいすぎたようだ。謝罪する」
青年は姿勢正しく片膝をついて謝ってくれたが、そもそも彼は声をかけてくれたのに無視したのはリダだ。
彼は悪くない。
せめてそんな思いだけは伝えたくて、リダは弱々しくかぶりを振った。
「慰めにはならないかもしれないが、きみはたいして眠ってはいない。マントもあったし、寝顔なんて誰にもさらしていないから安心してくれ」
それでもまったく気は休まらなかったものの、青年にこれ以上迷惑をかけたくない。
リダが小さくうなずいたとき、森から騒ぎが近づいてきた。
青年がすばやく近くの弓矢を取った。
「予想どおりだ、こっちに追い立てられてきたな」
楽しげなその言葉が終わるか終わらないかのうちに、木々のあいだに鋼狼の巨躯が現れる。
赤く光る凶暴な目に狙いをつけられ、リダは恐怖ですくみあがった。
(こっちに来る!)
最初のコメントを投稿しよう!