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鋼狼が一直線に突進してきてリダが反射的に目をつぶった瞬間、鋭く弓が鳴った。
直後、巨大な物がどさりと倒れた。
リダはおずおずと目を開けた。
片目に深々と矢が突き立った鋼狼が地面に横たわっており、弓を下げた青年が冷静に見つめて言った。
「大丈夫だ、たてがみが寝ている。倒せた」
リダは呆然として青年を見上げた。
彼が鋼狼を仕留めた。
だが彼が使ったのは魔力ではなく、どう見てもただの弓矢だった。
そのとき森から貴族の青年たちが現れ、倒れた鋼狼と青年の姿に目を丸くして叫んだ。
「クローディス殿下!」
リダも目を丸くした。
この国の王子の名は、さすがにリダでも知っている。
青年がふりむいた。
その顔には、初めて彼を見たときに感じたあの挑発的な表情がより強く現れていた。
「名乗りが遅れて失礼した。第一王子クローディスだ。ただ──身内からはきみと同じく、似非者と呼ばれている」
魔力を持たない貴族の蔑称を王子の口から聞いて、リダは息を呑んだ。
クローディスは微笑んだ。
「よければ今度、きみとゆっくり話したい」
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