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§ § §
狩猟会のあと、リダは寝込むことになった。
といってもいつもの体調不良ではなく、ほんの少し風邪っぽいことをヴァレリアが心配したせいだ。
一応リダは断った。
「わたしは大丈夫です、お姉さま」
「だめよ、悪化したらどうするの? これは狩猟会に誘ってしまったわたしの責任よ。いい子だからこれ以上心配させないで、リダ」
姉は優しくも強引にリダの手を取り、ベッドへと導いた。
そこまでされると本当に体調が悪くなってきた気もして、リダはおとなしくベッドに入った。
ヴァレリアは侍女にまかせず、みずからリダに毛布をかけ、髪をなでた。
「ゆっくり休むのよ」
ヴァレリアは部屋を出ていき、リダはひとりになった。
そうなるとつい考えてしまうのは、狩猟会のことだ。
(……クローディス殿下はわたしをご存じだった……そして自分も似非者だとおっしゃった……わたしと話したい、と)
同じ似非者を自称しているとはいえ、自分のような者が王子と親しくなるわけにはいかないと、あのときリダは思った。
だがクローディスの楽しげな両眼に催促されて、リダはかすかながらもうなずいてしまった。
(王子が魔力を持たないなんて、本当にそんなことがあるのかしら……)
リダが小さな吐息をこぼして寝返りを打ったとき、あわてふためいた侍女たちが駆けこんできた。
しかもその直後、母までもが入ってきた。
滅多にないことに驚いて、リダはベッドから滑り出た。
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