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「リダ、すぐに着替えなさい! 急いで! 早くしなさい!」
母の金切り声に、リダはびくりと体を震わせた。
理由を尋ねる間もなく、侍女たちがリダの着替えにとりかかる。
そこへヴァレリアもやってきた。
「どうなさったの、お母さま? リダは風邪なのよ、ゆっくり休ませてあげて」
「そんな無礼はできません!」
母は手にしていた書状を振りかざした。
そこにちらりと王室の紋章が見え、侍女たちの着せ替え人形になっていたリダは息を呑んだ。
「クローディス殿下がリダを訪ねたいとおっしゃってきたの! 断れるはずがないでしょう!」
ヴァレリアが青い目をこぼれんばかりにみひらき、眉を逆立てた。
「なんですって!? リダ、なぜクローディス殿下があなたを訪ねてくるの? 狩猟会でお会いしたの?」
送るというクローディスの申し出を固辞してひそかに戻ったリダに、誰も気づく者はいなかった。
問われもしなかったので話さなかった経緯を、リダは説明しようとした。
「ええお姉さま、実は」
「やめなさい」
「えっ?」
ろくに話も聞かずに否定されて、リダはうろたえた。
ヴァレリアは顔をこわばらせて窓の外をにらんだ。
「聞いたことがあるの。クローディス殿下は身勝手な変わり者との評判よ。王子という身分にありながら、平民との交際なんてことまでするそうだわ」
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