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ヴァレリアの話のとおりなら、クローディスが平民同然の魔力を持たないリダに関心を持ったこともうなずける。
「似非者」と自称した王子に寄せられる関心は決して不快ではなく、むしろリダの胸にぽっと小さな灯りをともした。
だがヴァレリアが悲しそうに眉をひそめて見つめてくると、その灯りは急激にしぼんでしまった。
「だから会うのはやめなさい、リダ。いくら王子だからといって、こんな気まぐれにわたしの大切な妹をつきあわせるわけにはいかないわ」
「ヴァレリア! お願いだから、クローディス殿下に失礼はしないでちょうだい」
母がさらに甲高い金切り声をあげた。
いつもヴァレリアを優先させる母も、さすがに王子となるとそうもできないらしかった。
「奥さま、殿下がいらっしゃいました!」
侍女が駆けこんできて、リダはあわてる母に応接間へと追い立てられた。
クローディスはゆったりと長椅子でくつろいで、背後に立った男女の一団と楽しげに言葉をかわしていた。
リダと母に気づき、立ちあがる。
「突然訪ねてしまってすまない。また驚かせたかな」
母の熱心な歓迎の言葉をさりげなくそこそこで打ち切らせて、クローディスはさっさと本題に入った。
「エルリーダ嬢を少々お借りします。彼女に見せたいものがあるので。かまいませんね?」
母は驚きを隠しきれない顔になったが、リダはそれ以上に驚いた。
(エルリーダ──)
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