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訪問に際し、クローディスはきちんとリダのことを調べてくれたのだろう。
それが自分の名だともちろん知ってはいたが、いつも略称のリダと呼ばれて、誰かの口から聞いたことはこれが初めてだ。
自分とは思えない居心地の悪さと、だがそれと同時になんだか誇らしいような背中が伸びるような、これまで感じたことのない気持ちになる。
その間にクローディスは母を送り出し、リダに椅子を勧めた。
「きみのうわさは聞いていたよ。狩猟会で会えてうれしかった。そんなきみがどう思うか、聞いてみたくてね」
クローディスは楽しげに、連れてきた一団を示した。
男女ともに色あざやかで派手な衣装だが、どこか安っぽい。
(平民だわ)
ヴァレリアの言葉を思い出す。
だが、なぜクローディスは彼らを連れてきたのだろう。
そしてリダに何を聞きたいのだろう。
いぶかしがるリダをおもしろそうに眺めながら、クローディスも別の椅子に座った。
「やってくれ」
応接間の中央に一組の男女が進み出て、ほかの者たちは楽器を取り出した。
そして音楽とダンスが始まった。
リダは目をみはった。
(舞踏会とはこんな感じのものなのかしら)
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