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リダは少しだけ嘘をついた。
ゆっくり話したいと言われたこともだが、特に似非者という彼の自称を聞いたことは絶対に隠しとおすつもりでいる。
それは似非者であるリダへのたわむれだったのかもしれない。
だが、もしかしたら同じ瑕疵を持つ者への真実の告白だったのかもしれない。
(今度ゆっくり話したい、とおっしゃって、でもいざいらっしゃったらそんなことは全然なくて)
クローディスとの会話は最低限のものでしかなかった。
だが魔力を持たない平民たちの演奏とダンスをともに楽しみ、そのすばらしさを共有したことは、多くの言葉を費やしたのと変わらないくらいの充足感があった。
「リダ、本当の本当に? あなたからも何も言ってはいないの?」
重ねられたヴァレリアの手に力がこもった。
リダはついに鈍い頭痛をおぼえはじめた。
顔がゆがみそうになるが、我慢する。
「ええ、お姉さま。クローディス殿下が気まぐれな方なのでしたら、きっとこれもそうなのだと思います」
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