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「どうなさったのではないわよ、リダ。こんな冷えた部屋で何をしているの? 早くいらっしゃい、あなたも狩猟服を合わせましょう」
ヴァレリアはしなやかな体に真新しい狩猟用のドレスをまとっている。
白薔薇にたとえられる上品なあでやかさが一段と引き立てられて、実の姉ながら見とれてしまうほどだ。
そこへ、貴婦人にはあるまじき早足で母が現れた。
ちらちらとリダを気にしながら、姉にささやく。
「ヴァレリア、さ、今度は靴よ」
姉は眉をひそめた。
「お母さま、わたしの靴よりリダの服が先よ。わたしも去年の冬に初めて狩猟会に行ったのですもの、今年はリダの番だわ」
すると母はようやくまともにリダを見た。
「リダは遠慮するほうがいいでしょう、体が弱いのですもの。準備だって大変でしょうし。ね?」
姉と同じ母の青い瞳には、困ったような、諭すような光が宿っている。
リダは褐色の目を伏せ、そのままこくりとうなずいた。
自分がときどき寝込んでしまうことも、狩猟会の舞台となる森はまだまだ寒さが残ることも事実でしかない。
そしてなによりも、父と母が自分をほかの貴族たちの前に出したくないことはわかっている。
「ええお母さま、わたしは──」
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