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「ふふっ」
小さく笑ってしまったところに、ノックがあった。
リダはあわてて長椅子に戻るのと扉がひらくのは、ほぼ同時だった。
「リダ! どうしてきちんと話さないの!」
飛びこむように入ってきたのは母だった。
また顔色を変えていて、その手には書状がある。
リダはうろたえた。
「なんのことですか、お母さま?」
「あなたはこんなことすらできないの!? クローディス殿下から大舞踏会へのお誘いを受けていたのなら、きちんと話さなくてはだめじゃない! あなたのせいで大恥をかいてしまったわ!」
「お母さま、わたし、本当に何も──」
母はほとんど地団太を踏むようにいらいらと歩きまわり、リダをにらみつけた。
「嘘をおっしゃい! 大舞踏会への出席者名簿をクローディス殿下からつきかえされたのよ、なぜあなたがいないのかって。まるでわたしたちがあなたをわざとのけものにしているかのように言われて、こんな恥ずかしいことがありますか! いまからではまともな準備などできはしなくてよ!」
一方的に非難をぶつけられて、リダの目に涙がにじんだ。
それでも母の口調は少しもやわらぐことはなかった。
「これもあなたがしっかりクローディス殿下にお話ししないから! 体が弱くて行事参加は難しいのだと、どうしてお話ししなかったの!?」
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