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「調べたのです。クローディス殿下は初の狩猟会参加以来、毎回弓矢で鋼狼を仕留めておいでだそうですね。誰もがその矢に殿下の魔力が込められていると思っておりますけれど、実際矢が射抜いていたのは鋼狼の口だったり目だったり──鋼鉄の毛皮で守られていない場所でした。たいへん優れた技量とはいえ、魔力ではありませんわね」
リダは息を呑んだ。
楽士たちの技量を称えていたクローディスを思い出しながら、彼をうかがう。
光と影の魔力になぶられながら、クローディスは動じることなくあの挑発的な表情をたたえている。
ヴァレリアはリダの手を取って立ちあがった。
一瞬、光の輝きと影の暗さがひときわ濃くなり、そして消えた。
「クローディス殿下はご自身に似た者だから妹に関心を持たれたのでしょうが、はっきり言って迷惑です。どうぞご理解いただきますよう、お願いいたします」
ヴァレリアはリダの手を引いて堂々と歩き出した。
ますます強くなる倦怠感に、リダは倒れこまないようにするのが精いっぱいだった。
(ごめんなさい──あなたの秘密を暴かせてしまって──ごめんなさい、クローディス殿下──)
せめて心のなかで謝ることしかできなかった。
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