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ヴァレリアが彼の秘密を暴いてしまったのは、リダのせいだ。
似非者のリダに話しかけ、魔力を持たない者でも優れた技量を持てることを教えてくれた彼を、リダは傷つけてしまった。
悲しみと同時にリダの胸にこみあげたのは──初めて姉に対して持った怒りだった。
(わたしのことをわかってくださる方だったのに)
クローディスが本当に似非者なのか、リダにとってはどうでもいい。
リダにとって最も大切なのは、彼の言葉も表情も行動も、リダの心の奥底にまで入ってきたということだ。
誰もが目を奪われるヴァレリアではなく誰からも忘れられるようなリダを、クローディスは見てくれた。
リダと話したいと言い、自分がすばらしいと思うものを教えてくれ、何かできることは自分にもあるかもしれないとリダに思わせてくれた。
両親にも、そして姉にも感じたことのない包みこまれるような安心感を、彼はリダに与えてくれた。
(どうしてクローディス殿下にあんなひどいことをしたの、お姉さま? わたしに悪いことをすると決めつけたの?)
こわばったリダの顔を、ヴァレリアは誤解した。
心配そうに眉をひそめ、手を取ってベッドへ連れていこうとする。
「ほら、また体調をくずしたのではない? まだ本調子ではないのよ、大事にしなくては」
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