2人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
だがリダが最後まで言うより早く、ヴァレリアが優しくも強引にリダの手を取った。
「だめ。去年の狩猟会だって、リダをひとり残して心配でたまらなかったのだもの。ね、リダ、今年は一緒に狩猟会に行きましょう。準備に疲れてしまうなら、ドレスはこれを着ればいいわ。とても軽くて温かいの」
「お姉さま……」
両親すら存在を忘れたがっているリダを、この美貌と才能と愛情にあふれた姉だけはいつもかわいがってくれる。
部屋いっぱいの人形も、新調の必要などないほどのドレスも、全部ヴァレリアが見つくろってくれたものだ。
「最近は体調もよかったじゃない。ね、行きましょう」
ヴァレリアはリダの手をぎゅっと両手で握りしめてきた。
どうあっても狩猟会に連れていくという本気が感じられて、リダは少し具合が悪くなってきた。
(こんな優しいお姉さまをがっかりさせられない……)
くらくらする頭を懸命にこらえ、リダは笑顔を作った。
そして嘘をついた。
「ありがとう、お姉さま。楽しみです」
「ええ、一緒に狩猟会を楽しみましょうね、リダ」
ヴァレリアは花がひらくように微笑んだ。
その後ろで顔をしかめてため息をついた母に、リダは目を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!