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ヴァレリアの眉が一瞬ぴくりと動く。
危ない橋を渡っている。
だからリダは慎重に嘘をつく。
「もちろん踊りたいとか、ましてクローディス殿下に会いたいわけではないの。ただ」
「……ただ?」
「王宮で一番すばらしいという大広間で、お姉さまが周りの方から称えられながら踊るところを見てみたいの。大舞踏会に参加するのではなくて、お姉さまの付添としてなら、そうっと見ることはできないかしら」
ヴァレリアは少し困ったような微笑を浮かべ、考えているようだった。
リダは心配そうな顔を作って姉を見つめた。
やがてヴァレリアはひとつ息をつき、ぎゅっとリダを抱きしめた。
「しょうがないわね、でも決して無理をしてはだめよ。体調が悪くなったら、すぐに馬車に戻るのよ」
頭痛がひどくなり、倦怠感が襲ってくる。
だがリダは本心から微笑んだ。
「はい、お姉さま」
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