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§ § §
王宮には着飾った貴族たちの馬車が次々と乗り入れ、慣れた宮廷使用人たちが手際よく案内していく。
キャシアス侯爵家の一行もそうして大広間の一員となった。
惜しむことなくともされた灯りが輝き、それを泉の水のように透明なガラスのシャンデリアが散乱させて、昼の光とはまた違った洗練された明るさが満ちている。
リダはおもわずまばたいた。
その間にも、父はさっそく顔見知りに話しかけ、母も目当ての貴婦人の一団を見つけた。
早く加わろうと、まさに白薔薇の化身のように装ったヴァレリアの袖を引いて急かす。
リダは姉に先んじて声をかけた。
「お姉さま、ではわたしはあの椅子のあたりで見ています」
ヴァレリアは満足そうに微笑んだ。
「ええ、でも我慢してはだめよ、気分が悪くなったらすぐに馬車に戻るのよ」
リダはうなずいた。
だが、自分の言ったことも姉に言われたことも守るつもりはなかった。
貴族たちと飲み物を給仕する使用人たちでごった返す大広間を、せわしく見わたす。
(クローディス殿下──)
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