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彼はどこにいるのだろう。
王と王妃とともに、最後に現れるのだろうか。
しかしなんとなく、彼はそうしない気がした。
やがてリダは、大広間の端の目立たない場所に一段高く作られた楽団のための場所を見つけて近づいた。
(あの方なら、もしかして──)
楽士たちはもうそろっていて、まもなく始まる本番に備えて楽器を確認している。
人ごみを縫って近づいていくと、ひとり壇のすぐ下の壁ぎわにもたれて楽士たちを眺めている青年がいた。
その濃色の髪はひと房だけ少し短くなって跳ねていた。
一見、知人もろくにいない落魄貴族と見間違うような地味な身なりと行動だったが、リダにはすぐにわかった。
リダは足を速めて彼に近づいた。
「──すみませんでした!」
真っ先に口をついて出たのは、ぎこちない謝罪だった。
青年がふりかえり、リダを認めると切れ長の目をみはった。
思いが強すぎるせいで、うまく言葉になってくれない。
それでもリダは彼を見つめ、たどたどしく説明を試みた。
「わたしのせいで、姉がひどいことをしてしまって──ずっと謝りたくて、わたし──」
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