4 舞踏会での約束

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 彼があたりをうかがいながら、人差し指を自分の口の前に立てた。  リダが口をつぐむと、あの挑発的な微笑ではなく、もっと無邪気でどこかいたずらっぽい顔になって手招きする。  ここでは話したくないらしい。  リダはこくりとうなずいた。  彼が向かったのは大広間に隣接した中庭で、星明かりをほのかにはじくタイルが敷き詰められていた。  あかあかとかがり火も焚かれていたが、春先の冷気を残す夜風のせいもあって人影はなかった。 「──よかった。危うく行き違いになるところだった」 「えっ?」 「キャシアス侯爵家の一行が来ていることを確かめたら、抜け出して侯爵家へ行こうと思っていた。それなら、誰にも邪魔されずにきみと話せる」  クローディスはあっさり言い、なのにリダはどきりとした。  単に驚いただけでなくて、いったん早まった鼓動がそのままとくとくと鳴りつづけている。  そんな胸のせわしさのせいか言葉が出てこない。  クローディスはおもしろそうにリダを見てきた。 「なのにきみから会いに来るとはな。ほんの数日で、なんだかだいぶ変わったようだ」  リダは数度唇を震わせ、やっと言葉を出した。 「──謝りたかったんです。どうしても、クローディス殿下に」
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