4 舞踏会での約束

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「うん? 何を?」 「ですから姉があんな──たいへん無礼なことを、傷つけるようなことを」  その途端、クローディスは大声をあげて笑った。  リダは目を丸くした。  笑い声の気配が残る声が言う。 「たしかにきみの姉はそうしようと思っていたようだ。実際聖女と呼ばれるだけの力はあるが、残念ながら視野はひどく狭いな。自分は常に正しく、自分の考えは万人に共有されるものと思いこんでいる」  リダが漠然とヴァレリアに抱いていた感情を、彼はずけりと表した。 (本当にそう──)  あるのは納得だけで、姉に申し訳なくなるほどに罪悪感がない。  ヴァレリアといるとしばしば襲われる靄が、二度と戻らないほど完全に消え失せたような気持ちになる。 「あのとき俺が傷ついたと、きみも思ったのか?」  問われて、リダは目を閉じた。  とくとくとまだ治まらない鼓動を感じながら、自分の心を掘り下げる。 「……いえ。クローディス殿下は、おもしろがっていらっしゃったように見えました」  目を開けると、おもしろそうにリダを見つめて目線でうなずくクローディスが見えた。  リダは言葉を続けた。 「傷ついたのはクローディス殿下ではなく、わたしです。姉のせいで、クローディス殿下にわたしまで──嫌われてしまったと思って」
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