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生まれてからずっと一緒だった姉、いつも妹を愛してくれた姉は、いまも優しい。
だというのに、リダは強烈な違和感をおぼえてぞっとした。
ヴァレリアが愛し、優しくしているのは誰なのか。
(それはわたしじゃない!)
妹を見つめる姉のまなざしは、リダを見ていなかった。
リダが何を思い、どうしたいのか、知ろうとするどころかそうした意思の存在にすら気づいていなかった。
妹を抱きしめようと改めて両手を広げたヴァレリアは、まるで獲物を捕らえようとする巨大な蜘蛛だ。
リダは叫んだ。
「違うわ!」
肩に力が入り、自然と両手を握りしめる。
姉にも、嘘のない自分の言葉を伝えるために。
戦うために。
「クローディス殿下は、わたしにもできることがあるのだと教えてくださっただけ。だから感謝しているの、とてもうれしかったの」
「リダ、だからそれが嘘なのよ。あなたのせいではないけれど、それでもあなたに魔力はないの。あなたは何もできないかわいそうな子なの。だからわたしが守ってあげる、あなたはわたしに守られるべきなのよ」
美しくも恐ろしい微笑をたたえる姉の言葉に、リダは髪を揺らしてかぶりを振る。
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