5 嘘と本当

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「いいえ、お姉さま。たとえクローディス殿下が嘘をついて、わたしがたぶらかされているのだとしても、それはお姉さまとは関係のないわたしの問題だわ。わたしは自分でできる、お姉さまに守られたくなんてない。わたしは──」  勇気を振り絞って想いを口にする。 「クローディス殿下に会いたかったの。一緒にいたいの!」  言ってしまった──心臓が痛いほどせわしくて、リダは肩で息を入れた。  ヴァレリアが笑顔を消して完全な無表情になった。  一方、隣のクローディスはどんな顔をしているのだろう。 (ご迷惑なら謝罪しなければ)  言ったことに後悔はない。  だが自分の発言には責任を取らねばならない。  リダがクローディスに目を向けようとしたそのとき、笑い声が降ってきた。 「──たぶらかされているとしたら、それは俺のようだ」  リダは彼を見た。  クローディスは笑みを含んだ両眼でリダを見つめ返した。 「もちろんまったくかまわないが。──よろしければ、今宵の舞踏会のお相手役を務めさせてはもらえないだろうか、エルリーダ嬢」  彼が曲げた腕を差し出してくる。  王子らしく礼儀にかなった社交上の申し出に、リダの胸はきゅうっと締めつけられる。 (今夜の、舞踏会だけ……)
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