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「いいえ、お姉さま。たとえクローディス殿下が嘘をついて、わたしがたぶらかされているのだとしても、それはお姉さまとは関係のないわたしの問題だわ。わたしは自分でできる、お姉さまに守られたくなんてない。わたしは──」
勇気を振り絞って想いを口にする。
「クローディス殿下に会いたかったの。一緒にいたいの!」
言ってしまった──心臓が痛いほどせわしくて、リダは肩で息を入れた。
ヴァレリアが笑顔を消して完全な無表情になった。
一方、隣のクローディスはどんな顔をしているのだろう。
(ご迷惑なら謝罪しなければ)
言ったことに後悔はない。
だが自分の発言には責任を取らねばならない。
リダがクローディスに目を向けようとしたそのとき、笑い声が降ってきた。
「──たぶらかされているとしたら、それは俺のようだ」
リダは彼を見た。
クローディスは笑みを含んだ両眼でリダを見つめ返した。
「もちろんまったくかまわないが。──よろしければ、今宵の舞踏会のお相手役を務めさせてはもらえないだろうか、エルリーダ嬢」
彼が曲げた腕を差し出してくる。
王子らしく礼儀にかなった社交上の申し出に、リダの胸はきゅうっと締めつけられる。
(今夜の、舞踏会だけ……)
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