5 嘘と本当

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 責任を取る覚悟は持っていても、やはり望みがかなわないことはつらい。  できることなら、ヴァレリアが来る寸前にそうしてくれたように、クローディスには腕ではなく手を差し出してほしかった。  彼の手に迎えられ、包まれる喜びを感じてみたかった。  だがリダにリダの意思があるように、クローディスにはクローディスの意思がある。  だからリダは震える声で嘘をつく。 「……はい。よろこ──」 「この嘘つき、なんてふしだらな真似を!」  夜気をつんざくヴァレリアの鋭い声がそれを邪魔した。  まなじりを決した怖い顔は、まるで別人だった。 「あなたがこの舞踏会でわたしを見たいというからつれてきてあげたのに、あなたは嘘をついたのね、わたしを裏切ったのね!」  リダはすくみあがりながらも、姉への言葉を口にした。  嘘のない、本当の言葉を。 「はい、そうです。ごめんなさい。わたしはお姉さまが望むようなかわいい妹ではありません。嘘つきで、卑怯で、キャシアス侯爵家にふさわしくない似非者(えせもの)で──」 「──いや、最後のそれは違う」  クローディスが割って入った。 「むしろきみが似非者であってくれなければ、きみの姉は困る。聖女には聖女らしさを知らしめる小道具が必要だ。似非者の妹を不幸だかわいそうだと優しく遇してやることくらい、清らかで心優しい聖女にふさわしい行動はない」
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