5 嘘と本当

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 彼はどこか憐れむようにヴァレリアを眺めていた。 「無力な妹がみじめであればみじめであるほど、その横できみは清らかに光り輝き、皆に称えられ崇められる。そういう自分が大好きだったんだろう?」  真摯なだけに容赦のない言葉を聞きながら、リダはひたとヴァレリアを見つめた。  ヴァレリアの顔が醜くゆがんだ。  その声が裏返った。 「──黙りなさい、似非者の分際で!!」  途端、クローディスの顔に挑発的な表情がひらめいた。 「これはこれは、聖女ともなるとずいぶん恐れ知らずでいらっしゃる。こちらは一応は王子に生まれついているのだがな。王族への侮辱は罪になるぞ」  からかう口調だが、彼の指摘は事実だった。  だというのにヴァレリアはまるでひるまない。  かがり火の炎を宿したかのようなまなざしでクローディスをにらみつける。 「あなたにリダはあげないわ! リダはわたしのそばにいるの。ずっと、わたしがいいと言うまで守られるべきなの」  美しくも冷ややかな微笑がひらめいた。 「試してみましょうか。似非者王子と聖女と、どちらが信望を得られるか」 「それはやめておこう、分が悪い──」  クローディスの軽口は途中で切れた。
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