5 嘘と本当

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 いきなり襲いかかってきた光の矢からとっさに顔をかばった彼の手袋が切り裂かれ、露わになった手に血がにじむ。  リダは青ざめた。 「やめて! お姉さま、やめて、やめてください!!」  かがり火が揺らぐ中庭に、光と影の乱舞が始まった。  そのただなかにヴァレリアが冷たく立っていた。 「じゃあ戻ってらっしゃい。そして二度と勝手な真似をしないでちょうだい。それならこれだけで許してあげるわ。いまなら転んだとでも言えばごまかせるでしょう、クローディス殿下?」 「それは──」 「あなたったら本当に卑怯なのね、リダ。クローディス殿下より自分のほうが大事なの。あなたなんかに手を出したことだけでも十分に恥だけれど、それよりも皆の前に似非者とさらされてしまうことのほうが、王子としては何十倍も恥なのよ。もしかしたら王族から追放されるくらいにね」  光の矢と影の翼が次々と中庭のかがり火を倒していく。  このままでは大広間に異変が伝わるに違いない。 (人が来てしまう!)  人びとが駆けつければ、ヴァレリアは妹を守ろうとしたのだと訴えるだろう。  そして彼らの前に、ヴァレリアの魔力の前になすすべもない似非者の王子の姿がさらされるだろう。 「かまうな。従う相手は自分の心だけだ」  クローディスが言った。  リダの目にみるみる涙があふれた。 (あなたと一緒にいたいです、クローディス殿下。けれどそれより──あなたを守りたいです)
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