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自分にとって彼がどれほど大切か、せめて知っておいてほしかった。
想いを伝えたくて、リダはクローディスの傷ついた手を両手で握った。
その瞬間、クローディスが顔色を変えた。
「──だめだ、よせ!」
「えっ?」
珍しく必死なクローディスの声は、だが遅かった。
じかに触れた彼の手に、リダのなかから熱のようなものが流れこむ。
(これは──)
本能が悟った。
引かれようとした彼の手を、リダはとっさに、全力で胸に抱き寄せた。
胸から飛び出しそうに激しく脈打つ心臓から彼の手へと熱をそそぎこむと同時に、頭に白く靄がかかり、鈍い頭痛がやってくる。
すっかり慣れたその感覚に、これまで漠然と感じていたことがはっきりする。
(全部──わたしの魔力は全部、すべてあなたに!)
「──きみは」
クローディスが呆然とつぶやいた。
どうにか弱々しく微笑むのが精いっぱいで、リダは声どころか脳内に言葉すらまとめられない。
それでもこれで大丈夫だという安心感が鼓動を落ち着かせていく。
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