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感嘆のささやき声がリダにも聞こえてくる。
去年の狩猟会で、ヴァレリアはほかの貴族たちを圧倒する魔力を見せつけた。
美貌も相まって「聖女」と呼ばれるようになったことは、リダも侍女たちのうわさ話で聞いていた。
だが、ささやき声はヴァレリアへの賛辞だけではなかった。
──隣は誰かしら?
──お気に入りの侍女にしては贅沢な格好ね。
祖母の先代侯爵夫人譲りの赤みを帯びたやわらかな色合いの髪が少し目につくくらいで、リダの容姿は平凡そのものだ。
ヴァレリア見立ての華やかなドレスを喜んでみせはしたものの、本心では自分に着こなせるとは思えなくていまも泣きたい。
そんな自分がヴァレリアと姉妹だとは、誰も思わないだろう。
(わたしだって、そうは思えないもの)
一刻も早く、ヴァレリアの妹だと悟られる前に目立たない隅に引っこみたい。
どのみちリダは、狩猟会になど参加できないのだから──。
そのとき、事情通らしい者の声がした。
──キャシアス侯爵令嬢の妹らしいぞ。
そして、それに答えた声がリダの心を突き刺した。
──ああ、似非者だとかいう。
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