1 姉と妹の狩猟会

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 聞きたくなかった言葉がついに聞こえて、すうっと血の気が引いた。  それまで前で堂々と馬を進めていた両親の背中もこわばって、それを見たリダの両眼に涙がにじんだ。  貴族であれば、誰もが魔力を持つ。  キャシアス侯爵家の者もその親族も、当然全員が魔力を持つ。 (なのに、わたしひとりだけ──)  貴族とは名ばかりの、平民と同じくなんの魔力も持たない無能力者。  貴族が何よりも疎み、軽蔑する存在。  それがリダだった。  ──まあ、聖女の妹が似非者なのですって?  ──同じ家に生まれた姉妹だというのに、運命とは残酷なものだな。  ──お顔立ちもまったく似ていませんものね。  リダはうつむき、なんとか顔だけでも隠そうとした。 「──リダ」  ヴァレリアに呼ばれて、リダは顔をあげた。  姉は優しく微笑んで手を伸ばし、リダの震える手を握ってくれた。 「あなたはわたしの世界で一番かわいい妹なのよ。今日も一緒に狩猟会に来てくれて、わたしが見立てたドレスも着てくれて、こんなにかわいい妹なんてほかのどこにもいないわ。それではだめ?」  リダは涙をこらえて笑顔を作った。 「お姉さま、ありがとう」
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